2012年 11月 27日
みんなで一緒に暮したら(Et si on vivait tous ensemble) |
フランス・ドイツ 合作映画 監督・脚本:ステファン・ロブラン
主演:ジェーン・フォンダ、ジェラルディン・チャップリン、ピエール・リシャール、
クロード・リッシュ、ギイ・ブドス、ダニエル・ブリュール
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いい人生の見つけ方、そこには仲間と笑顔とシャンパンと素敵なお家があればいい、というお話しである。
「みんなで一緒に暮したら」は誰もが直面する老年期の問題を、シリアスで繊細、ユーモアたっぷりに描いたいかにもフランス映画らしい馥郁たる香りがいい。
<人生のエンディングをどう迎えるか?>は誰もが人生で向き合う最大で最後の選択であるが、42歳の新鋭監督のステファン・ロブランは5年もかけてこの映画を仕上げたが、その視点に老境に対する温かい眼差しがある。
即ち、75歳を越えた5人の人生の中で、老い、病気、孤独、死に対峙することに深刻になりすぎず、心豊かに、個性を認め合い、又人間的尊厳を守りながら、共同生活の葛藤と笑いと涙の中で“心の絆”を巧く表現している。
高齢化の進む今、老後をどう暮らすかは問題化しているが、ややもすると、最先端医療や老人施設の社会の仕組みにその解決の重点が移っているように見える。人間的に何かが欠けているのではないかと問いかけている。
この映画では、終末に近付いている夫々の人生を、家族の絆や仲間と育んだ友情の温もりから切り離さない、決して<社会に丸投げしない>でなにげない日常の付き合いの中に歓びと心の豊かさがある事を描いている。
物語は、パリの郊外に住む5人の40年来の愉快な友人同士、アルベールとジャンヌ夫妻(ピエール・リシャールとジェーン・フォンダ)、ジャンとアニー夫妻(ギイ・ドブスとジェラルディン・チャップリン)、一人暮らしのクロード(クロ―ド・リッシュ) は何時もながら誕生会など旧交をジャンの家で温めていたが、夫々が段々年を重ねた心身の変調や障害をきたしている。ある日ロマンを追っているクロードが女友達とデート中に心臓発作を起こした事で、息子に老人ホームにいれられてしまう所から話が展開してゆく。
気になった4人がある日クロードを見舞いに老人ホームに訪れるが、あまりにも味気なさに、“こんな処で友人を死なせるわけにはいかない”とばかりに強引に連れ出して、5人の共同生活の中に癒しの活路を見出してゆくのである。
この中で、一番若いジャンヌ(ジェーン・フォンダ)は夫アベールの“呆け”には友情が必要と思っていたので,嫌がる夫に、好きな犬の散歩係として青年ディルクを雇って、家族の様な不思議な共同生活を賛成し実現させる。
その5人の日常には、年はとっても決して枯れていない生の人間のロマンや葛藤や共感を伴っていて、人を社会的存在から個人的存在に引き戻してくれている。
結末は、実はジャンヌは病院で自分の病が進行している事を聞くがそれを伏せて、チャーミングに振舞いながら、健気にも夫や他人に心配りを見せる内に、先に亡くなってしまう筋書きにおどろかされる。
ある日の夕食後、痴呆の夫アベールが“ジャンヌがいない”と云いだして外に飛び出してゆくのを、切ない気持で見ていた仲間も追いかけて行き、夜空に”ジャンヌ“と一緒に咆哮して行くラストシーンは感動的であった。
この映画の裏話として、ジャンヌを艶やかに演じた、ジェーン・フォンダはこの脚本に自身の気持ちをこめて演じられた様であり、「The bucket List」<バケットリスト>棺桶に入る前にして置きたいリストに「フランスで映画を撮りたい」と云う願いが叶っただけに迫真の演技に繋がっている。後の3人もジェーンに合わせ、アンサンブルの良い演技で、チャップリンの娘、ジェラルディンを始め、名優揃いで老境の哀歓を巧みに捉えていて見応えがある。
この映画は、生きているかぎりそこに必ず喜びがあると、老人たちの共同生活を楽しいドラマにしたものだが、翻って、日本の
高齢化社会に向かう今日、家族を含む人と人の絆が欠けていては、老人ホーム、介護施設が整っただけでは、いい終末は期待できない処方箋を示している。
(☆☆☆☆)
(平成24年11月24日)
主演:ジェーン・フォンダ、ジェラルディン・チャップリン、ピエール・リシャール、
クロード・リッシュ、ギイ・ブドス、ダニエル・ブリュール
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いい人生の見つけ方、そこには仲間と笑顔とシャンパンと素敵なお家があればいい、というお話しである。
「みんなで一緒に暮したら」は誰もが直面する老年期の問題を、シリアスで繊細、ユーモアたっぷりに描いたいかにもフランス映画らしい馥郁たる香りがいい。
<人生のエンディングをどう迎えるか?>は誰もが人生で向き合う最大で最後の選択であるが、42歳の新鋭監督のステファン・ロブランは5年もかけてこの映画を仕上げたが、その視点に老境に対する温かい眼差しがある。
即ち、75歳を越えた5人の人生の中で、老い、病気、孤独、死に対峙することに深刻になりすぎず、心豊かに、個性を認め合い、又人間的尊厳を守りながら、共同生活の葛藤と笑いと涙の中で“心の絆”を巧く表現している。
高齢化の進む今、老後をどう暮らすかは問題化しているが、ややもすると、最先端医療や老人施設の社会の仕組みにその解決の重点が移っているように見える。人間的に何かが欠けているのではないかと問いかけている。
この映画では、終末に近付いている夫々の人生を、家族の絆や仲間と育んだ友情の温もりから切り離さない、決して<社会に丸投げしない>でなにげない日常の付き合いの中に歓びと心の豊かさがある事を描いている。
物語は、パリの郊外に住む5人の40年来の愉快な友人同士、アルベールとジャンヌ夫妻(ピエール・リシャールとジェーン・フォンダ)、ジャンとアニー夫妻(ギイ・ドブスとジェラルディン・チャップリン)、一人暮らしのクロード(クロ―ド・リッシュ) は何時もながら誕生会など旧交をジャンの家で温めていたが、夫々が段々年を重ねた心身の変調や障害をきたしている。ある日ロマンを追っているクロードが女友達とデート中に心臓発作を起こした事で、息子に老人ホームにいれられてしまう所から話が展開してゆく。
気になった4人がある日クロードを見舞いに老人ホームに訪れるが、あまりにも味気なさに、“こんな処で友人を死なせるわけにはいかない”とばかりに強引に連れ出して、5人の共同生活の中に癒しの活路を見出してゆくのである。
この中で、一番若いジャンヌ(ジェーン・フォンダ)は夫アベールの“呆け”には友情が必要と思っていたので,嫌がる夫に、好きな犬の散歩係として青年ディルクを雇って、家族の様な不思議な共同生活を賛成し実現させる。
その5人の日常には、年はとっても決して枯れていない生の人間のロマンや葛藤や共感を伴っていて、人を社会的存在から個人的存在に引き戻してくれている。
結末は、実はジャンヌは病院で自分の病が進行している事を聞くがそれを伏せて、チャーミングに振舞いながら、健気にも夫や他人に心配りを見せる内に、先に亡くなってしまう筋書きにおどろかされる。
ある日の夕食後、痴呆の夫アベールが“ジャンヌがいない”と云いだして外に飛び出してゆくのを、切ない気持で見ていた仲間も追いかけて行き、夜空に”ジャンヌ“と一緒に咆哮して行くラストシーンは感動的であった。
この映画の裏話として、ジャンヌを艶やかに演じた、ジェーン・フォンダはこの脚本に自身の気持ちをこめて演じられた様であり、「The bucket List」<バケットリスト>棺桶に入る前にして置きたいリストに「フランスで映画を撮りたい」と云う願いが叶っただけに迫真の演技に繋がっている。後の3人もジェーンに合わせ、アンサンブルの良い演技で、チャップリンの娘、ジェラルディンを始め、名優揃いで老境の哀歓を巧みに捉えていて見応えがある。
この映画は、生きているかぎりそこに必ず喜びがあると、老人たちの共同生活を楽しいドラマにしたものだが、翻って、日本の
高齢化社会に向かう今日、家族を含む人と人の絆が欠けていては、老人ホーム、介護施設が整っただけでは、いい終末は期待できない処方箋を示している。
(☆☆☆☆)
(平成24年11月24日)
by masakuzu
| 2012-11-27 14:31
| ヨーロッパ合作