2001年 01月 10日
ライフ・イズ・ビュ-ティフル |
イタリア映画
監督・主演 ロベルト・ベニ-ニ
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一見,明るいホ-ム・ドラマ の様な響きのある「ライフ・イズ・ビュ-ティフル」と言う題名で,緑豊かなトスカ-ナ風景が出てきて,一体何処へ連れていって呉れるのかと思っていると,この作品は,人間を厳しい究極の環境の中で,光も又逃げ場もない状況でも,人生の価値を見失はず「人生は美しい」と言える生き方で家族を守り,明日に受け継がれてゆく命の素晴らしさを描いている愛のメッセ-ジ であった。
ホロコ-スト,強制収容所,民族浄化思想が齎した消える事のない歴史的事実は、今尚深い傷をもってヨ-ロッパ ,バルカン,西アジア を被っている。ホロコ-ストを扱った著述,映画は数多い。1996年製作のイタリア他欧州合作映画「遙かなる帰郷」はイタリア作家プリモ・レ-ヴィ- がアウシュビッツから奇蹟的に生還した前後と一度打ち砕かれた人間性を取り戻して行く姿を描いたがそれ以前に上映された「シンドラ- のリスト 」等から併せ考えると50年以上経っても癒えない傷の深さを感じてしまう。 日本で,”も早戦後ではない”と言う言葉が流行ったが,これは経済復興 の意味とは思うが、平和と繁栄が戻れば,傷口が癒えたと,思いがちな日本の環境との差は質的に大きい。強制収容所はドイツ やポ-ランド だけでは無く,イタリア,オ-ストリア,チェコ ,ハンガリ- フランス,ベルギ-,オランダ等で恐怖の地域はかなり広く又深い。沢山の欧州人,一人一人に覆い被さった苦難は,長いユダヤ 人迫害の歴史と重なり合って図り知れないものがある。収容所を寓話的に描きながら”人生は美しい”と言えるスピリチュアル な世界を描いて見せている。
映画のテンポ は軽快なタッチでベニ-ニ扮するグイド の本屋の計画が壊れ,ウエイタ- になってド-ラ と結ばれるまでコミック仕掛けで目まぐるしく進む。寓話風に才気煥発なアイディア豊富に展開する。やっと,念願の本屋を開業,ド-ラ との生活と可愛い子供ジョズエの登場から,ややシリアスに転調して行く。監督で主演のロベルト・ベニ-ニ はモノロ-グの出身でチャップリンを始めとする時代風刺の手法を随所に嵌め込んで自ら演じてみせている。ベニ-ニの才気と演技の乗せられているうちに,休むひまなく,強制収容所のシリアスな場面に連れ込まれてしまう。もうこの暗黒の世界では,コミックが行き所を失う筈であるが,子供ジョズエを,失望させないように、収容所の出来事をゲ-ムに置き換える事でベニ-ニは,寓話マジックを実現させてしまった。
この作品の組み立て方にカンヌ映画祭は最高な評価を与えた事は,ヨ-ロッパの精神風土では,理解できるし,ベニ-ニの計算された熱演に,米国71回アカデミ- 賞でアメリカの候補者達を抑えて主演男優賞を与えている。
連合軍が迫り逃亡前のナチの兵隊の最後の乱脈行為に,結局グイドは捕まってしまい決定的な場面になるが,広場の鉄の箱の中に匿った子供ジョズエの覗き見している前でゲ-ムを装い,お道化て行進して見せる。物陰の銃声は全てを物語るが,静寂になった広場にたったジョズエの前に,グイド の約束した戦車が現れ,ジョズエの歓喜が,受け継がれた命の喜びを画面一杯に描いて「ライフ・イズ・ビュ-ティフル」は感動的に幕を閉じる。
即ち,意図の高さ,素晴らしい映像展開やキャスト,を配した秀作の一つと言えるであろう。にも係わらず,何故か口に馴染まないご馳走の味を感じてしまった。西欧の”道化”は抗しきれぬ権力へのレジスタンスに反応して,出現してくる代物であるが,モノロ-グ役者ベニ-ニに見る”灰汁”の強さや激しさが,東洋の”ミソシル”族には,味が濃すぎる気がしてならない。
(平成11年5 月17日)
監督・主演 ロベルト・ベニ-ニ
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一見,明るいホ-ム・ドラマ の様な響きのある「ライフ・イズ・ビュ-ティフル」と言う題名で,緑豊かなトスカ-ナ風景が出てきて,一体何処へ連れていって呉れるのかと思っていると,この作品は,人間を厳しい究極の環境の中で,光も又逃げ場もない状況でも,人生の価値を見失はず「人生は美しい」と言える生き方で家族を守り,明日に受け継がれてゆく命の素晴らしさを描いている愛のメッセ-ジ であった。
ホロコ-スト,強制収容所,民族浄化思想が齎した消える事のない歴史的事実は、今尚深い傷をもってヨ-ロッパ ,バルカン,西アジア を被っている。ホロコ-ストを扱った著述,映画は数多い。1996年製作のイタリア他欧州合作映画「遙かなる帰郷」はイタリア作家プリモ・レ-ヴィ- がアウシュビッツから奇蹟的に生還した前後と一度打ち砕かれた人間性を取り戻して行く姿を描いたがそれ以前に上映された「シンドラ- のリスト 」等から併せ考えると50年以上経っても癒えない傷の深さを感じてしまう。 日本で,”も早戦後ではない”と言う言葉が流行ったが,これは経済復興 の意味とは思うが、平和と繁栄が戻れば,傷口が癒えたと,思いがちな日本の環境との差は質的に大きい。強制収容所はドイツ やポ-ランド だけでは無く,イタリア,オ-ストリア,チェコ ,ハンガリ- フランス,ベルギ-,オランダ等で恐怖の地域はかなり広く又深い。沢山の欧州人,一人一人に覆い被さった苦難は,長いユダヤ 人迫害の歴史と重なり合って図り知れないものがある。収容所を寓話的に描きながら”人生は美しい”と言えるスピリチュアル な世界を描いて見せている。
映画のテンポ は軽快なタッチでベニ-ニ扮するグイド の本屋の計画が壊れ,ウエイタ- になってド-ラ と結ばれるまでコミック仕掛けで目まぐるしく進む。寓話風に才気煥発なアイディア豊富に展開する。やっと,念願の本屋を開業,ド-ラ との生活と可愛い子供ジョズエの登場から,ややシリアスに転調して行く。監督で主演のロベルト・ベニ-ニ はモノロ-グの出身でチャップリンを始めとする時代風刺の手法を随所に嵌め込んで自ら演じてみせている。ベニ-ニの才気と演技の乗せられているうちに,休むひまなく,強制収容所のシリアスな場面に連れ込まれてしまう。もうこの暗黒の世界では,コミックが行き所を失う筈であるが,子供ジョズエを,失望させないように、収容所の出来事をゲ-ムに置き換える事でベニ-ニは,寓話マジックを実現させてしまった。
この作品の組み立て方にカンヌ映画祭は最高な評価を与えた事は,ヨ-ロッパの精神風土では,理解できるし,ベニ-ニの計算された熱演に,米国71回アカデミ- 賞でアメリカの候補者達を抑えて主演男優賞を与えている。
連合軍が迫り逃亡前のナチの兵隊の最後の乱脈行為に,結局グイドは捕まってしまい決定的な場面になるが,広場の鉄の箱の中に匿った子供ジョズエの覗き見している前でゲ-ムを装い,お道化て行進して見せる。物陰の銃声は全てを物語るが,静寂になった広場にたったジョズエの前に,グイド の約束した戦車が現れ,ジョズエの歓喜が,受け継がれた命の喜びを画面一杯に描いて「ライフ・イズ・ビュ-ティフル」は感動的に幕を閉じる。
即ち,意図の高さ,素晴らしい映像展開やキャスト,を配した秀作の一つと言えるであろう。にも係わらず,何故か口に馴染まないご馳走の味を感じてしまった。西欧の”道化”は抗しきれぬ権力へのレジスタンスに反応して,出現してくる代物であるが,モノロ-グ役者ベニ-ニに見る”灰汁”の強さや激しさが,東洋の”ミソシル”族には,味が濃すぎる気がしてならない。
(平成11年5 月17日)
by masakuzu
| 2001-01-10 13:13
| イタリア